BALL ドア解錠で室内灯を点灯する機能を追加
 ポルシェ928GTSのカタログには、「ドライバーがドアを解錠すると室内灯が点灯し、エンジンを始動するまで消えません」との記述があります(当然のことですが、実際には一定時間が経過すると消えます)。928は、特別な技術を要求されることなく、誰もが200km/h巡航を可能とする高性能GTです。私は、928のこうした性格みかんがみると、乗る者を優しく迎え入れるこのようなユーティリティは、現実にどの程度有用であるかは別として、この車に是非ともあって欲しい機能であると思います。

 そこで、未だこの機能が搭載されていなかった私の1990年型928S4に、何とかアドオンしてしまおうと考えました。

92GTSのカタログのP18  左は1992年型GTSのカタログです。赤線部分が当該記述です。当時はこうして特記されるほど先進的な機能でした。現に、私が1992年当時所有していたのは84年型の928S2でしたが、これは残照式ですらありませんでした。

 なお、カタログに明記されたのは1992年以降ですが、実際には1991年、つまりS4の最終型からこの機能は備わっています。

 当初、1991年以降のコントロールユニットを移植することで実現できるのでは、と簡単に考えていたのですが、ワイヤリングダイアフラムを調べたり、実車を観察してみたところ、90年型と91年型は全く違う方法で制御されていることが判明しました。機能上の違いは、このドアロック連動の室内灯点灯機能の有無だけなのですが、90年型が従来からの機構上で機能を追加されてきたものであるのに対し、91年型からはシステムの世代が替わり、当初からそれらの機能を実現すべく新たに構築されているため、ハーネスやコントロールユニットの互換性は全くありません。

ドアコンタクトとロッキングコントロール(概念図)  そのような訳で、一旦は諦めかけたのですが、「いやまてよ」。1990年型には残照式の室内灯(1989年以降に装備)が備わっており、これはドアを開けると一定時間点灯し、エンジンを掛けると消灯します。つまり、前記のGTSの解錠時の動作と全く同じなわけで、これをうまく利用することで機能を追加できるのではないかと考えました。

 ワイヤリングダイアフラムによると、室内灯は、ドアが開いている間はドア付け根付近にあるドアコンタクトと呼ばれるスイッチが作動することによって、セントラルエレクトリック(ヒューズおよびリレー等がひしめく配電盤)のコネクターLの12番線がアースされ、点灯します。アース状態が解消(すなわちドア閉)されてもタイムリレーにより一定時間点灯し続けますが、イグニッションをONにすると強制的に消灯されます。

 一方ドアロックは、ドアのキーホールにキーを差し込んで解錠方向に回すと、シリンダーに仕込まれたスイッチでロッキングコントロールの9番線がアースされ、これによって左右のドアがアンロックとなる仕組みでした。

セントラルエレクトリック  左がセントラルエレクトリック(一部)。矢印が指している赤/白のコネクタがLで、矢印先端部分が12番です。これが一瞬でもアースされると、室内灯は一定時間点灯し続けます。
ロッキングコントロール  センターコンソール助手席側内部に位置する黒い箱がドアロッキングコントロールです。後端にコネクタがあり、9番から出ている2本の線が、左右のドアのキーシリンダーにそれぞれ接続されており、キーで解錠動作することによってアースされると、左右両方のドアロックを解除します。
コネクタ  ロッキングコントロールのコネクタを外したところ。左側の上から2番目が9番です。
ドアコンタクトとロッキングコントロール(リレーを入れた概念図)  最初に考えたのは、左図のとおり、ドアをアンロックする際に流れるロッキングコントロール9番からの電流を利用してリレーを作動させ、L12を一瞬アースさせるというものです。

 懸案は、施錠中はセキュリティシステムが作動していますが、これを施すことによって、システム上は解錠の瞬間にドアが開いてすぐ閉じるよう認識されるため、セキュリティの解除タイミングとの兼ね合い次第では、好ましくない動作を起こす可能性があるということだけ・・・
だったはずでした。

手持ちの純正リレー  ところが、コントロールユニットからの出力は、電圧は12Vあるものの電流は微弱で、リレーを作動させるには至りませんでした。

 ではどうするか。ドアロックを直接動作させているモーターへの電流を使えば、リレーを作動させることも十分可能と思われますが、これではキーで解錠した時以外にも、例えば走行中にセンターコンソールのスイッチで施解錠した時でさえ、フラッシュライトの如く室内灯が一瞬点滅することとなり、よろしくありません。こうした不都合を解消するにはイグニッションON時にはさらに別のリレーで回路を殺す必要があるなど、実現する機能の割には煩雑で無駄が多く、現実的ではありません。

ドアコンタクトとロッキングコントロール(直結にした概念図)  そこでとりあえず、ロッキングコントロールにしてもドアコンタクトにしても、同様にアースをすることによって作動するという点で共通しているので、試験的にこれを直結してみることにしました。

 結果は、キーでドアを解錠することによって、ドアロッキングコントロールの信号と共にドアコンタクト行きの電流もアースされ、室内灯を点灯させることができました。  当初、唯一の懸案であったはずのセキュリティシステムとの干渉も、全く問題がないことが分かりました。

試行作業中  では、リレーなど使わずこれでいいではないか、と考えがちですが、そういう訳にはいきません。お気づきのとおり、これでは確かにドアのアンロックに連動して室内灯が点灯しますが、逆に、というか当然の結果として、ドアを開けている間は常にキーを解錠側に捻っている状態となり、バッテリー、モーター等に負荷を掛けるばかりか、通常一瞬しか流れない電流を長時間流す結果となり、故障、悪くすれば火災にも繋がりかねません。
ドアコンタクトとロッキングコントロール(ダイオードを入れた概念図)  そこで、ダイオードを入れることにしました。これで逆流が阻止されますので、ドア解錠時にはドアコンタクト側も一緒にアースされますが、ドアを開けてもロッキングコントロールの9番はアースされません。

 ついでにロッキングコントロールの出力側にもダイオードを入れます。理由は、ドアコンタクト側からの電流で、万が一にもコントロールユニットを破損してしまうことがないよう、保護するためです。

 そもそも、当初リレーを使おうと考えたのも、電気的にコントロールユニットとドアコンタクトを隔絶し、間違っても影響を与えることがないようにと考えての措置でした。

ダイオードを半田付け  リード線にダイオードを半田付けします。ダイオードはごく一般的な、耐圧60Vのもの。秋葉原にて1個28円(29円かも。レシートがないので正確には分かりません)で購入しました。
ピンの半田を溶かす  左は、ロッキングコントロールの9番コネクタから外したピン。左右のキーシリンダーに繋がる2本の線が確認できます。

 これから半田を溶かします。ハーネスを切断するのは嫌なので、根元の半田付けを外して、新たに作ったダイオード付きリード線に置き換える作業です。

今回作成した配線  こんな感じです。Y字型の配線になりました。
組み付け後  コネクタに組み付けます。青いリード線が、今回作成したもの。
L12には配線コネクタで  Y字の残りの一端を、ドアコンタクトに繋ぎます。センターコンソール下から、助手席足下のセントラルエレクトリック下まで延ばし、L12に接続します。ハーネスに傷を付けるのは嫌でしたが、ここだけは仕方ないので市販の配線コネクタ(矢印部分に青く見えているもの)を使用しました。
足下灯  これで完成。なくても別に困らないし、あったからといって特段利便性が上がる機能でもありませんが、本人は満足しています。

 なお、掛かった費用は、リード線や熱収縮チューブ、配線コネクタ等はもともとあった物を使用しましたので、ダイオード2個分の50数円だけでした。